釧路における音楽鑑賞活動の中で ( 6 )

徳田 廣


市民文化会館の完成

  77 ( 昭 52 ) 年 10 月から巨費 26 億円を投じて完成した釧路市民文化会館は 79 ( 昭 54 ) 年 11 月 3 日オープンした。記念式典には午前 10 時から札幌交響楽団と地元合唱団でシベリウスの 「 フィンランディア 」 、 11 時から 「 どん帳 」 の披露と民族的、郷土色豊かな釧路生まれの作曲家伊福部昭の名作 「 交響譚詩 」 が演奏され、続いてこけら落としとして釧路日本舞踊協会による 「 寿式三番叟 」 、同じく釧路宝生会による能 「 羽衣 」 「 猩々 」 「 小袖曽我 」 が演じられ、夜 6 時 30 分からはベートーヴェンの 「 第九交響曲 」 ( 合唱付き ) ― 前号記載 ― が演奏された。
 当時、市民文化会館の建設に尽力された建設協力会会長の渡邊源司さんは 「 着工にあたり我々市民も 100 年に一度の事業に協力しようと、昨年 7 月 『 緞帳 』 と一億五千万円という募金目標を掲げ活動を開始したところ、市民の善意が目標を大きく超え会館にふさわしい 「 緞帳 」 や各種の備品を贈ることが出来ました。地方文化振興の一大拠点としてこの会館を中心に各種の文化活動が活発になることを信じて疑いません。 」 と述べ、当時の 「 広報釧路 」 には第一次発表分として協力団体、企業、個人等含めて 320 以上の協賛があったことを伝えている。
 開館と同時に地方文化の普及振興と活動の拠点となるためには市民サイドからの管理運営が望ましく、財団法人・釧路市民文化振興財団が設立され、一応、市の手から離れて管理運営がなされ、当初理事長に青山一二 ( 元教育長 ) さんが当たることになった。
 この年は釧路市と鳥取町合併 30 周年、市民憲章制度 15 周年の年にも当たり、こうして開館した市民文化会館行事は 「 資料 31 - A および B 」 のように盛り沢山なものであった。 11 月 28 日予定の中村紘子によるスタンウェイ披露のピアノコンサートは中村さんがカゼのため翌年 1 月 29 日に延期となった。

「 表 1 」 財団、音文協の主催・主管等による音楽会等 ( 資料 31-A )
「 表 2 」 くしろ音楽 ( 旧労音 ) 、企業、団体等による演奏会等 ( 資料 31-B )

多様な新しい活動のはじまり

 釧路での音楽文化の活動については前号でも少し触れたが、①戦後昭和 20 年代、釧路音楽同好協会が主となり旧公会堂 ( 公民館 ) を会場に、②昭和 30 ~ 40 年代、釧路労音が主となり新公民館や厚生年金体育館を会場に、国内外の著名な演奏家の招聘や地元の演奏家の活動も含め活動して来たが、③その後は釧路市民文化会館が釧路の音楽文化の支えの中心となり、釧路市文化振興財団 ( 以下財団 ) 、釧路音楽文化協会 ( 以下音文協 ) 、釧路音楽協会 ( 以下音楽協会 ) などを中心に個人、グループ、団体、企業などによって多種多様な新しい活動が一段と活発化することになった。
 以下同会館での主な活動を表にまとめながら概観、適宜概説してみることにしよう。
  「 表 1 」 は、財団、音文協の主催、主管等によるもの、 「 表 2 」 は、くしろ音楽 ( 旧労音 ) 、企業、グループ、団体等によるものであるが、どちらの表中にも初回の来演のみを記入し、再演のものは省略した。その後活動を停止したり、 92 ( 平 4 ) 「 生涯学習センター 」 の開設で会場を移行したものもあるので 「 表 2 」 は 91 ( 平 3 ) 年までとし以下省略した。
 市民文化会館の開設によって国内外の演奏家、団体等の来釧も多くなり多様化が今迄にないほど進んでいる様子がわかる。

「 表 1 」 ( 財団、音文協などの主催等によるもの )

 年号 ( 昭和 or 平成 )    月   ( ) 内は昭和 or 平成の年号

  1980 ( 55 )   6    ナルシーソ・イエペス ギターリサイタル
           8    チェコ少年少女合唱団
           9    ステファーノ木内・オペラ劇場
          11    イェルク・デムス ピアノリサイタル
  1981 ( 56 )   1    カール店ズスケ ヴァイオリンリサイタル
           3    グレンミラーオーケストラ
           3    毎日学生音楽コンクール入賞者によるコンサート
           5    ソフィア・ゾリステン釧路公演
           8    グリーンコンサート
  1982 ( 57 )   5    アシュケナージ ピアノリサイタル
           8    砂原美智子さよならコンサート
           9    チャイコフスキー記念 東京バレエ団公演 「 眠れる森の美女 」
          12    ベルリンフィルハーモニー トリオ
  1983 ( 58 )   3    オペラ 「 夕鶴 」 公演
           5    読売日本公共学区団演奏会
           7    園田高弘ピアノリサイタル
          10    東京交響楽団演奏会
  1984 ( 59 )   4    清水和音ピアノリサイタル
           7    工藤重典フルートリサイタル
           7    中村紘子ピアノリサイタル
  1985 ( 60 )   4    神谷郁代珠玉のピアノ名曲集
  1986 ( 61 )   5    東京佼成ウィンドオーケストラ北海道特別公演
           8    中国民族器楽演奏会 ( 瀋陽音楽院演奏家による )
           9    イタリアン・バロック室内学団演奏会
  1987 ( 62 )   8    新日フィル演奏会
          10    北海道二期会オペラ公演 「 ヘンゼルとグレーテル 」
  1988 ( 63 )   8    東京フィルハーモニー演奏会
          10    文化庁移動芸術祭 「 松竹大歌舞伎 」 公演
  1989 ( 1 )     4    鮫島有美子ソプラノリサイタル
           4    淡谷のり子 「 生命ある限り、この唄を 」
           7    常森寿子、小松英明ジョイントコンサート
           8    ニューオリンズ・ジャズコンサート*釧路市開基 100 年・ 釧路港開港 90 周年記念
  1990 ( 2 )     1    松山バレエ団 「 白鳥の湖 」 ( 森下洋子・清水哲太郎ほか )
  1991 ( 3 )     3    島田裕子ハッピーコンサート
           5    山形弓フルートリサイタル
           9    文化庁移動芸術祭、二期会オペラ公演 「 カルメン 」
  1992 ( 4 )     2    小松秀典バリトン 「 冬の旅 」
           2    伊藤恵ピアノリサイタル
           8    芸術祭振興基金助成事業 「 日本音楽集団 」 特別公演
           9    ボリショイ劇場オペrコンサート釧路公演 ( エリツィン来日記念 )
          10    モスクワ木管七重奏団演奏会
          11    市制 70 周年 「 生涯学習センター ( 通称 "まなぼっと" ) オープンする=詳細別記=
  1993 ( 5 )    10    二期会 「 サウンド・オブ・ミュージック 」 公演
  1994 ( 6 )    10    モスクワアカデミーオーケストラ
          12    レニングラード国立バレエ 「 白鳥の湖 」
  1995 ( 7 )     1    ウイーン・シンフィニック・ポップス・ニューいやー・ガラコンサート
           7     PMF アカデミー シンガー リサイタル
           7    東京バレエ団、シルヴィ・ギエム 「 ボレロ 」 公演
           9    スペイン国立バレエ団 釧路公演
  1996 ( 8 )    4    モーリス・ペジャール 釧路公演
           4    天満敦子ヴァイオリンリサイタル
           5    ポーランド国立放送交響楽団
           6    吉野直子ハープリサイタル
           7    マイヤ・ブリツカヤ レニングラード国立バレエ&ロシアバレエのスターたち
 1997 ( 9 )    12    釧路交響楽団 「 第九 」 演奏会
 1998 ( 10 )    3    スタニスラフ・プーニン ピアノリサイタル
          10    北海道立芸術館オープン=)詳細別記=
          11    子ども歌舞伎 ( 篠路中央保育園 ) 公演
  1999 ( 11 )   5    市民文化会館会館 20 周年記念 NHK 「 BS 日本のうた 」 公開録画
           9    ニューオーリーンズ・ジャズ・イン・クシロ 99
          11    ぽーらんど ワルシャワ室内歌劇団、オペラ 「 フィガロの結婚 」 公演
  2000 ( 12 )   8    PMF オーケストラ演奏会
           1    第 9 回札響演奏会 ( ピアノ 山下洋輔 )
  2001 ( 13 )   7    レニングラード国立歌劇場管弦楽団演奏会
          10    天満敦子、無伴奏ヴァイオリンコンサート
  2002 ( 14 )   1    乳0位やコンサート 2002
           7    ウクライナ国立キエフバレエ団 「 白鳥の湖 」 公演




「 表 2 」 ( くしろ音楽 ( 旧労音 ) グループ ( 企業・団体 )の )

年号(昭和or平成)   月   ( ) 内は昭和or平成の年号


  1980 ( 55 )   6     アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル
           7     井内澄子ピアノリサイタル
           9     日本フィルハーモニー北海道定期公演
 1981 ( 56 )    6     NHK 交響楽団演奏会
           9     宝図化雪組公演
  1982 ( 57 )   7     高橋竹山津軽三味線リサイタル
  1983 ( 58 )   3     ペギー葉山 歌手生活 30 周年記念コンサート
  1984 ( 59 )   5     北電ファミリーコンサート
           9     日フィル四重奏団
          10     松竹歌劇団 SKD 東京踊り
  1985 ( 60 )   7     日フィル ブラスアンサンブル
  1986 ( 61 )   6     尚美学園ウィンドアンサンブルクシロ公演
  1987 ( 62 )   5     沖縄芸能親善交流団釧路公演
  1988 ( 63 )   9     スビャトスラフ・リヒテル ピアノリサイタル
  1989 ( 1 )    9     第 9 回日フィル釧路定期公演
  1990 ( 2 )    8     大野雄一舞踏 「 睡蓮 」 公演
          10     道新クラッシック札響演奏会
  1991 ( 3 )    8     HBC 少年少女合唱団公演
( 以下省略 )


( a ) ジャズやタンゴバンド来釧のきっかけとなったのは 80 ( 昭 55 ) 年の 「 日野晧正ジャズコンサート 」 があったが、やはり 81 ( 昭 56 ) 年来釧の 「 グレンミラー・オーケストラ 」 であり、次いで同年 「 ベニー・カター 」 「 渡辺貞夫 」 、 82 「 カウント・ベーシー 」 「 ライオネルハンプトン 」 「 原信夫とシャープス&フラッツ 」 、 83 年 「 ソニーロリンズ 」 、 86 年 「ニューポートジャズ 」 「 ジョージ川口 」 、 87 年 「トミードーシー 」 、 89 年市政 100 年、釧路港開港 90 周年記念で 「 ニューオーリンズ・ジャズオーケストラ 」 が来釧、港まつり行事に参加し、市民の人気を集めた ( 97 、 99 年にも来釧した ) 。一方、 92 年には 「 アルフレッドハウゼ・タンゴオーケストラ 」 が来釧している。 ( タンゴについては後述 「 民音 」 の項参照 )


( b ) 初めてのグリーンコンサート
イ・釧路市での初めての野外演奏会は、 81 ( 昭 56 ) 年 8 月 9 日市民文化会館の前庭で開かれた。早朝には降雨があったが、午後 1 時からの開演の時には明るい日ざしとなり、芝生の湿り気もなく爽やかな野外コンサート日和となった。演奏は尾高忠明さん指揮の札幌交響楽団、第一部は 「 ツァラトウストラはこう語った 」 ( 「 二〇〇一年宇宙の旅 」 のテーマ曲となっていた ) のほか映画音楽などを、第二部はビートルズナンバーから 「 イェスタデー 」 「 レット・イット・ビー 」 など。第一部の途中で鰐淵市長さんが挨拶の飛び入りでタクトをとると、芝生に腰をおろしてリラックスしていた約二万の聴衆から "ヤンヤ" と拍手が湧き、楽しい雰囲気のコンサートとなった。しかし特大のスピーカーから流れる音量は大きく、近くの住民からの苦情が出れば永続きしなくなるのではないかと気にもなった。湿度が多く、高温の日も少ない釧路の短い夏では野外音楽堂をつくるのも難しい。 「 資料 32 ― A 」 。 その後 87 ( 昭 62 ) 、福村芳一指揮、 91 ( 平 3 ) 年、堤俊作指揮の札響で行われた。

市民文化会館前庭におけるグリーンコンサート
 ― 釧路市での始めての野外演奏会 ― ( 資料 32 ― A )
尾高 忠明指揮 札幌交響楽団

ロ・東京西六郷少年少女合唱団に市内の清明、美原、附小の合唱同好会 ( 120 人 ) が参加して 「 第 3 回・親と子の音楽会 」 が、同じ日午後三時半から同館内で行われた。第一回 「 親と子の音楽会 」 は、 79 ( 昭 54 ) 年 「 国際児童年 」 を記念して同年 8 月 27 日、北大オーケストラと釧路少年少女合唱団の出演で "おもちゃのシンフォニー" "皇帝円舞曲" "トランペット吹きの休日" などが演奏された。 「 親と子の音楽会 」 はその後も継続され、第三回目を契機として清明、美原、附小の合唱同好会は活動を続けることになる。

( c ) 文化庁移動芸術祭

 文化庁は各都道府県・公立文化施設との共催で64(昭39)年から「移動芸術祭」を実施。我が国の伝統芸能や現代舞台芸術を低料金で鑑賞するために文化庁・主催者が経費を負担して開催されているもので、能楽・文楽・歌舞伎・新劇・オペラ・邦楽・邦舞・バレー・モダンダンス・ミュージカル・寄席芸能など多岐にわたっている。釧路では 「 松竹大歌舞伎 」 公演が、 88 ( 昭 63 ) 年、中村歌右衛門・芝翫・延若ら、 94 ( 平 6 ) 年、尾上菊五郎・市川左団次・尾上辰之助 ( 平成 14 年、尾上松緑を襲名 ) 「 資料 33 」 、 96 ( 平 8 ) 年、中村富十郎らが公演し本物の歌舞伎にふれ感動した市民も多い。菊五郎来釧のとき、父尾上梅幸が入院し重体であったということを後日聞いた。

「 松竹大歌舞伎 」講演 ( 96 ( 平 8 ) 年 ) ( 資料 33 )

  98 ( 平 10 ) 年秋、道芸能文化フェスティバルの一環として 「 子ども歌舞伎 」 が篠路中央保育園の園児たちによって 「 勧進帳 」 が演じられた。篠路に入植した人達の出身地の伝統に基づいて行われているのだが、この保育園では歌舞伎芸能を保存するため、中央から歌舞伎指導者の指導を得て保育園の正科に取り入れ取り組んでいる。 4 ~ 6 才の園児たちがあの難しい台詞回しや所作・舞を真剣に演じる姿は、なんとも可愛らしくしかも感動的であった。同年齢の子を持つ親、祖父母たちであろうか、笑いの中にも感涙しながら熱い拍手をおくる姿があった。無心に演じる幼子たちの姿に、もっともっと多くの人々が接する場があってもいいし、そのことによって日本の伝統的文化の底辺の広がりも、と言ったら大げさになるだろうか。
  91 ( 平 3 ) 年文化庁移動芸術祭として、二期会による歌劇 「 カルメン 」 の公演があった。新星日本交響楽団がオーケストラピットに入っての本格的なオペラ公演であったが、会場後方の席では歌詞がはっきり聞き取れなかったという声もあった。 ( 日本語訳 )


NHK 交響楽団の来釧
イ・ NHK 交響楽団が初来釧したのは 68 ( 昭 43 ) 年 ( 岩城宏之指揮 ) であった。会場は厚生年金体育館であったので 「 音響が悪い。釧路にはもう来ない! 」 という団員側の声があったという。その N 響が再び来釧するのは 81 ( 昭56 )年 6 月であった。市民文化会館オープンの翌年のことである。 N 響はその後、 85 ( 昭 60 ) 年、88 ( 昭 63 ) 年、 92 ( 平 4 )年、= 市政70周年記念 =、 95 ( 平 67 ) 年、 97 ( 平 ) 年、 00 ( 平 12 ) 年の何れも 6 ~ 9 月の頃である。その時期の釧路は湿度も高く、弦楽奏者の悩みの一つであったと思われるが、ワルベルク ( 指揮 ) 、独奏者では堤剛 ( チェロ ) 、野島稔 ( ピアノ ) 、竹沢恭子 ( ヴァイオリン ) 等が印象に残る。特に堤剛のドヴォルザークのチェロ協奏曲は、朗々として叙情的かつ重厚な演奏であった。会館からの帰途のバスの中で友人と "じめじめした濃霧が晴れたように爽やかな気分だナ" と N 響の演奏会の感想を喋っていたら、たまたますぐ近くに乗り合わせていたフルートの第二奏者の方がニコリと微笑み、嬉しそうだった。
  NHK も同じ公共料金を払っている地方の人々に配慮して、時にはデュトワ級の第一線の指揮者を、例えば 「 春の祭典 」 など地方公演の少ない曲などを一部プログラムに組み入れたり、サービス・実現化を計ってもいいのではないか。

ロ・企業などが主催するオーケストラ公演では北電ファミリーコンサートや道新のクラシックコンサートなどのほかにいくつかのコンサートが開かれている。札幌交響楽団を主とするものが殆どだが、共に来釧した演奏家には、斉藤秀雄最後の門下生の一人で、海外を含め最近では室内楽でも活躍し、小柄だが力強く情感豊かなチェロ奏者の藤原真理、我が国の国際的ピアノ演奏の草分けであり、今や日本を代表するピアノ界の巨匠と云われる園田高弘がある。シューマンのピアノ協奏曲に示された柔らかく、しかも思考深く構築されたロマン的詩情は国際的に磨かれた風格に満ちたもので、印象深かった。
 地元企業の主催のものでは釧路信用金庫の創業 70 周年記念事業として 95 ( 平 7 ) 年、東京フィルハーモニー ( 指揮 大友直人 ) 演奏会。伊福部昭の交響的音画 「 釧路湿原 」、シベリウスの 「 ヴァイオリン協奏曲ニ短調 」 ( ヴァイオリン加藤知子 ) 、ドヴォルザークの 「 新世界交響曲 」 、が当日のプログラムであった。同金庫は 00 ( 平 12 ) 年、創立 75 周年記念として、毎年サッポロを中心として世界各国から集まる若手演奏家の研修の場となるパシフィック ( P ) ミュージック ( M ) フェスティバル ( F ) = PMF オーケストラ演奏会を招いている。同金庫の山本寿福理事長さんは音楽に造詣も深く、地元の音楽文化向上にも強い関心を寄せ、札幌交響楽団釧路定期公演実行委員会の会長を両角靖二 ( 釧路ガス社長、現釧商会頭 ) から引き継いで活動の持続を計っている。
  93 ( 平 5 ) 年、これまで数度来釧し演奏会を重ねている道民のオーケストラ札幌交響楽団を支えるため、札幌交響楽団定期釧路公演実行委員会が発足し、第 1 回定期演奏会開かれた。公募による多くの会員 ( 個人と団体 ) によって支えられ堅実な演奏会が続けられている。最近の定期演奏会では 00 ( 平 12 ) 年、ピアノの山下洋輔を迎えて自作の 「 オーケストラとピアノの為の <仙波山> 」 とガーシュインの 「 ラプソディ・イン・ブルー 」 など異色のコンサートとなった。時折ピアノがオーケストラに消されてしまいがちなところもあったが、ジャズと現代音楽の境界や区別がなくなっている現今では、山下洋輔のピアノも本来のジャズの領域を超えた一面を感じさせたのではなかろうか。<仙波山>は、子どもの遊び唄 "あんたがたどこさ" が原曲である。

( e ) 世界的な海外演奏家の来釧
  80 ( 昭 55 ) 年代以降は世界的にも巨匠といわれる海外演奏家の来演も目立つ。既にギターのイェペス、フルートのランパルはその界の大御所、皇帝と呼ばれ、ピアノのアシュケナージ ( 現在は指揮者 ) は全盛期にあり、デムスやルプーは地味ではあるが堅実な評価は高く、ブーニンは新しい旋風をおこしつつあった。こうした海外演奏家達の来釧に先がけて最初に期待されていたのが、 80 ( 昭 55 ) 年、レオニード・コーガン ( オイストラッフに次ぐソビエトの代表的ヴァイオリニスト ) の来釧であったが、家族等を含めての来日、当時の政治的事情からかビザが下りず中止となり、幻の演奏会となってしまった ( 因みに S 席 6000 円、 A席 5000 円、以下略 ) 。

それから数年後コーガンは航空機事故で他界し、残念極まりない。
 来釧演奏家の中で特に話題を呼んだのは、ピアノの巨匠・リヒテルである 「 資料 32 ― B 」。戦後ソビエトのピアノ界ではオボーリンと並んでリヒテルの存在があった。前者は来日しコンサートを開いているが、後者はカーテンの向こうにいる 「 謎のピアニスト 」 として、しかも世界最高のピアニストとして全世界の音楽界から注目されていた。 「 そのピアニストが釧路に来る!! 」 ということは全く驚きであり、 「 本当に来るのか? 」 と疑いの目でみる人々も多かったのである。そしてやはり話題は広がった。先ず演奏曲目がつかめないこと。使用するピアノはヤマハ CFⅢ のグランドピアノ ( 当時七百万円 ) 。リヒテルの信頼を得る調律師を同行させる。演奏前、控室に一切人を近づけない。開演を告げるベルや館内放送はカット。演奏中は勿論、演奏以外でも写真撮影は一切禁止、撮った場合は演奏をやめる。 10 才未満の子の入場や第一部のプログラム終了まで会場の出入り厳禁。カメラ、アラーム時計、カセットレコーダー等の持ち込みは勿論禁止、市内に二泊の宿泊所も極秘等の諸条件がついていた。受け入れ側のヤマハ楽器などの担当関係者は神経をピリピリさせたという。僅か五日前に発表された演奏曲目は、 「 ピアノソナタヘ長調 K 553 」 ( モーツアルト ) 第 2 楽章まで、 「 ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 」 ( ブラームス ) 、 「 スケルツォと行進曲 」 ( リスト ) であった。

スヴィヤトスラフ・リヒテル ( 資料 32- B )

 戦後しばらくはヤマハのピアノは "響かない" "褌のゆるんだ音" だなどと云われ、世界的に使用されるピアノはスタンウェイが圧倒的だったと云う。ヤマハの技術陣は、反響板・ピアノ線をはじめ木部の結合部分などにも木工職人なども加えて日本の家具の伝統である・蟻組み・手法を取り入れ、改良に改良を重ねていた。 69 ( 昭 44 ) 年、リヒテルから 「 日本のピアノを試してみたい 」 と連絡ががありヤマハが注目され、リヒテルの指摘や意見に沿って更に改良を重ねた結果、 79 ( 昭 54 ) 年 「 私のために作ってくれたことに感謝を込めて 」 と日本でのコンサートが開かれることになる。結果は 「 素晴らしいピアノを有難う 」 ( リヒテル ) 。 「 おれたちのピアノに魂が吹き込まれた 」 ( ヤマハ ) であったと伝えている。優れた調律師の一人は 「 フォルティッシモは宇宙の広がり、ピアニッシモは澄みきった空、音色は神のように 」 と言い、 「自分の頭から音楽とは関係の無い一切の思念を取り払うとともに、徴収が演奏家よりも音楽そのものに注意を集中できるようにする・・・ 」 とリヒテルは言う。ともに音楽に対する深遠な市勢が示されているように思う。
 リヒテルの演奏に接した友人の一人は 「 自分の人生観が変わったようだった 」 と語っている。

( f ) 民音の催し
 創価学会系の民主音楽協会( 民音 ) の藻代おいをまとめたのが> 「 表 3 」 である。

「 表 3 」 ( 民主音楽協会 )

 年号 ( 昭和 or 平成 )  月   (  ) 内は昭和 or 平成の年号


    1980 ( 55 )  3    カルロス・ガルシア タンゴオーケストラ
            7    内山田洋とクールファイブ
            9    渥美三郎と共に
    1981 ( 56 )  3    チェリッシュ コンサート
            8    伊東ゆかりコンサート
    1982 ( 57 )  1    雪村いずみ コンサート
            8    八代亜紀と共に
    1083 ( 58 )  3    二葉百合子リサイタル
            5    しばたはつみ コンサート
    1984 ( 59 )  3    山本譲二コンサート
            5    藤田まこと民音歌謡劇場 「 望郷の詩 」
            7    川中美幸コンサート
           12    ニニ・ロッソ 演奏会
    1985 ( 60 )  4    北島三郎ショー
            8    みんなで歌おう 「 サウンドミュージック 」
    1986 ( 61 )  7    小林幸子コンサート
    1987 ( 62 )   2    神野美伽コンサート
            5    イルカ コンサート
    1988 ( 63 )   4    マリアーノ・モーレス学団
           12    創価学会第 1 回吹奏楽団演奏会
    1989 ( 1 )   4    アントニオアグリ&シンフォニエッタタンゴ
            6    ザ・ベンチャーズ結成 30 周年記念コンサート
            11    内田やす子コンサート
    1990 ( 2 )    4    中山美穂コンサート
            6    ダークダックス コンサート
            9    民音劇場 「 滝廉太郎 」
    1991 ( 3 )    9    平尾昌晃コンサート
    1992 ( 4 )    2    グローリア&エドワルド タンゴ舞踏団
            4    ワンダフル 「 前川清 」
            6    森山良子コンサート
    1993 ( 5 )   10    松山バレエ団 「 くるみ割り人形 」 公演
    1994 ( 6 )    4    美川憲一スペシャル             8    研ナオコ コンサート
            11    アンデス・フォルクローレの彗星
    1995 ( 7 )    3    中国雲南歌舞団公演
            9    「 ブロードウェイ物語 」 ミュージカル
    1996 ( 8 )    3    東京バレエ 「 ボレロ、春の祭典ほか 」
            4    山本リンダ コンサート
            7    オランダ王立セントヴァーヴォ少年合唱団
            8    吉幾三オンステージ 96
            11    三船和子コンサート
    1997 ( 9 )    5    民音落語会 「 こん平・昇太二人会 」
    1998 ( 10 )   3    中島啓江コンサート
            7    ドレスデン フィルハーモニー児童合唱団
            10    民音創立 5 周年記念 「 森進一ショー 」
    1999 ( 11 )   2    中国京劇団公演
            9    舞太鼓あすか組 「 天響の炎 」
    2000 ( 12 )   3    松山バレエ団 「 白鳥の湖 」
    2002 ( 14 )   4    夢・岩崎宏美 2002


 クラシックから歌謡曲と多彩であるが全体的には大衆的なものが多い。
 民音以外に興行団体、日専連、企業グループなどの主催によって行われた歌謡曲、ポップス等の出演者を 79 ( 昭54 ) ~ 85 ( 昭 60 ) 年まで来釧順にあげると次の様になる。 田端義夫、松山千春、堀内孝雄、榊原郁恵、こまどり姉妹、美空ひばり、千昌夫、さだまさし、長渕剛、ゴダイゴ、浜田省吾、五木ひろし、サザンオールスターズ、北島三郎、中島みゆき、三橋美智也、加藤登紀子、松村和子、金田たつえ、ボニージャックス、松山恵子、岸千恵子、早見優、河合奈保子、沢田研二、西条秀樹、梅沢劇団、松任谷由美、武田鉄也、芦屋雁之助、バーブ佐竹、小泉今日子、中森明菜
、  86 ( 昭 61 ) 年以降は 「 表 3 」 民音を参照の外、都はるみ、由紀さおり、保田祥子、天童よしみ等があるが省略する。


釧路音楽協会と地元演奏家の活動

( a )釧路音楽協会 ( 以下音楽協会 ) は 66 ( 昭 41 ) 年に発足し、 「 資料 34 」 の同協会規定にみられるような目的に沿って会長はじめ約 40 名の個人、団体の会員 ( 演奏者側 ) と約 90 の個人、団体からなる賛助会員によって構成され活動を続けている。同協会が発足当初から

イ.ジュニアコンサートを企画し 「 音楽を愛好する児童生徒に演奏の機会を多くつくると共に、早くからステージの厳しさを経験する 」 という趣旨の元に 00 ( 平 12 ) 年には第 35 回の回数を数え、出演者総数も 650 名を超えている。
ロ.新人演奏会はイと同年、公民館習作劇場第 2 回公演参加に始まり途中数回の中止はあったが、 02 ( 平 14 ) 年には第 30 回の演奏会を重ね質的な向上を見せ、イの出演経験者も多く、出演者の総数は 200 名を超えている。新人演奏会については 「 資料 36 ― A ・ B 」 、優れた演奏者に与えられる釧路音楽協会高後賞については 「 資料 35 」 を参照されたい。
 音楽協会の活動内容については前 10 号で若干触れているので今回は 78 ( 昭 53 ) 年以降のものを ( 重複する演奏会等を除いて ) まとめたのが

「 表 4 」 ( 民主音楽協会 )

 年号 ( 昭和 or 平成 )  月   ( ) 内は昭和or平成の年号


    1978 ( 53 )    8    フィルハーモニア漢学五重奏団・道音楽教室
            10    アンサンブルの夕べ )~( 以後現在も続く )
    1979 ( 54 )    9    新日本フィルハーモニー
            11    「 第九 」 演奏会
            11    ソリストの夕べ ( 以後現在も続く )
    1980 ( 55 )    2    砂原美智子・中谷孝哉ジョイントコンサート
            10    ラドー・ルプー ピアノコンサート
    1981 ( 56 )   10    オリジナル楽器によるバロック音楽の夕べ
             11    イ・ムジチ演奏会
    1982 ( 57 )    3    笠原茂子・藤田敦子ジョイントリイサイタル
             4    坂本絹子・大木敬子ジョイントリサイタル
             10    菅野絹子・西池彰ジョイントリサイタル
             11    ウィーン弦楽合奏団
    1984 ( 59 )    2    谷内田きよ子 ソプラノリサイタル
             11    桃井信子ピアノリサイタル
    1985 ( 60 )   11    高橋寿子・藤田敦子ジョイントリサイタル
    1986 ( 61 )    8    姥沢愛水ピアノリサイタル
             9    板本絹子ハープリサイタル
             11    仲西純子・菊池紅ジョイントリサイタル
    1987 ( 62 )    6    西池彰フルートリサイタル
             7    本間亜樹子ソプラノリサイタル
    1988 ( 63 )    4    国立ワルシャワ・フィルハーモニー・オーケストラ
             6    泉洋子ソプラノリサイタル
    1989 ( 1 )     8    高坂朋聖ピアノリサイタル
             11    高橋寿子ソプラノリサイタル
    1990 ( 2 )     11    菊池紅ソプラノリサイタル
       ( 中略 )
    1994 ( 6 )     6    フィレンツェ・トスカーナ管弦楽団演奏会
             6    MOO・EGG コンサート始まり現在も継続
    1996 ( 8 )     6    小松英典バリトンリサイタル
             11    釧新郷土芸術賞制定 30 周年、釧新郷土芸術賞受賞者記念演奏会
    1997 ( 9 )      4    森川栄子ソプラノリサイタル
    1998 ( 10 )    3    小松英典バリトンリサイタル
              5    菊池紅・駒ヶ嶺ゆかりジョイント・アーベント
    1999 ( 11 )    7    二人の声楽家によるドイツ・リートの夕べ
             11    鈴木圭子フルートリサイタル
    2000 ( 12 )    7    泉洋子ソプラノリサイタルM
    2001 ( 13 )    10    音楽協会発足 35 周年記念演奏会
    2002 ( 14 )    5    第 30 回釧路新人演奏会

 国内外の著名な演奏家の招聘と地元演奏家の活動への同協会の取り組みが把握できるのではなかろうか。ここに出演している地元演奏家の大半は前記ロの中から輩出した人達である。

( b ) 地元演奏家の活動は市民文化会館小ホールなどでピアノ・声楽・箏などの門下生の発表会が行われ ( 音響があまり良くないと批判もあった ) て来たが 92 ( 平 4 ) 年、少々仰々しい感じだが 「 凛とした郷土に生きるわたしたちは地球家族の一員として、豊かな個性と生きがいを求め、自ら学び続けます。輝く明日をひらくために 」 と生涯学習都市宣言もし 「 生涯学習センター 」 ( 通称まなぼっと ) がオープンし、翌 93 ( 平 5 ) 年、ラムサール条約国際会議が釧路で開かれたこともあって、これに関連する若干の催しがあったが、同センターは市民文化会館と目的も異なり各種の学習・研修の会も多く活発的だが音楽活動の面でも同様であり 「 表 5 」 でこれを概観してみた。

「 表 5 」 ( 生涯学習センター )

年号(昭和or平成) 月   ( ) 内は昭和or平成の年号

  1992 ( 4 )    6    東シベリア・サハ共和国サハ民族口琴ホムス公演
         11    アイヌ叙事詩創生神曲劇 「 カムイ・ユーカラ 」
  1993 ( 5 )    7     PMF 室内アンサンブル演奏会
          9    ウイーン・クラッシクハーモニーコンサート
          9    劇団四季ミュージカル 「 コーラスライン 」
         11    エストニア文化フォーラム エストニア・アンサンブル演奏会
  1994 ( 6 )    2    佐藤しのぶ ソプラノリサイタル
          6    館野泉 ピアノ リサイタル
          7    PMF 94 ヒューストン シンフォニー チューバ プレイヤーズ演奏会
          7    市 ロシア親善教会0 周年記念 ロシア民族アンサンブル釧路公演
         10    日本・中国 女陰とコンサート 二胡・琵琶・筝
  1995 ( 7 )    3    ベルリン管楽ゾリステン
          5    こんにゃく座オペラ 「 セロ弾きのゴーシュ 」 公演
          7    エストニア少女合唱団 「 エレルヘイン 」 釧路公演
  1996 ( 8 )    1    ウイーン レディース管弦楽団ニューイヤー コンサート
          1    モスクワ国立フィルメンバーによるロシア国立アカデミー室内オーケストラ
          8    釧新そうりつ 50 周年記念事業 「 筝の祭典 」
  1997 ( 9 )    7    アンサンブル・リンツ オーストリア室内楽の夕べ
          8    ベンチャーズ来日 35 周年記念じゃぱんツァー 97
  1998 ( 10 )  11    道芸術文化フェスティバル in 釧路 賠償千恵子ほか
  1999 ( 11 )  6    前橋汀子ヴァイオリン リサイタル
          9    リンツ木管ゾリステン 室内楽の夕べ
          9    高嶋ちさ子&村沢美濃カジュアル クラッシクス
  2000 ( 12 )  4    中村紘子デビュー 40 周年記念ピアノリサイタル
         12    コヴァスキュラ シンフォニー 「 フィンランドの響き 」 公演

 表中 96 ( 平 8 ) 年 8 月の釧新創立 50 周年事業 「 箏の祭典 」 は野坂恵子 ( 生田流 ) 、小畑恵一 ( 宮城会 ) 、石丸基司 ( 作曲・指揮 ) さん等を中心に 「 物語舞 」 ( 伊福部昭 ) 、 「 綺 羅」 ( 杵屋正邦 ) 、箏楽オーケストラと女声合唱のための 「 蒼き松に寄せる頌舞 」 ( 石丸基司 ) などのほか 「 桜貝の歌 」 「 水色のワルツ 」 「 平城山 」 など箏を、さとわ会、文月会、緑の会、昌和会、泉洋子 ( ソプラノ ) 、釧路混声合唱団 ( 女声 ) 、釧路合唱連盟、日本尺八連盟の出演で行われている。

 地元演奏家による
イ・個人、門下生、教室等の発表会は多くを数えるが列挙すれば、葛西ユキ、柏村一志、板本絹子、大木敬子、三浦昭悦、菊地哲史、高橋寿子、藤田敦子、小野由起子、藤原まゆみ、近藤友子、原口春子、大沢里美、仲西純子、菊地江、福田正代、林雅子、荒木裕子、広田曜江、松永千鶴子、三浦弘美、釧路ピアノの会、釧路音楽院、佐野マス、杉山寿司子、泉洋子、曽根敦子、平田由紀子、中西ひろみ、小飼久司、花輪季子、進藤信子、桑原恵子、中本マリ、中島みゆき、斉藤良子、本間景子、玉村恵子、横井久美子、七戸幸枝、蛯沢愛水、本間寿栄、古畑久美子、高坂朋聖、木下太陽、松原俊恵、浅井隆二、北口智宏、力石真奈美、大柳美輪子、森川栄子、札木朗里、荒谷宏、大広千恵子、羽田野美幸、高橋阿樹子、鈴木圭子、菅野ヴァイオリン教室、ディスクールシュル、橋本はるみ、鈴木順子、小畑恵一、国澤秀一、寿芳会、花邑流、宝生会など多数を数えるが全記出来ず省略するが、中にはそれぞれジョイント、デュオを試みている人もいる。

ロ・長期にわたる個人、グループ、団体等の活動も目覚ましく 「 表 6 」 には 97 ( 平 5 ) 年以後の活動状況をまとめてみた ( 長期にわたっての活動なので前年までの部分は省略 ) 。

「 表 6 」 ( 地元演奏家の活動 )

年号(昭和or平成) 月   ( ) 内は昭和or平成の年号

  1995 ( 7 )   11    釧路混声合唱団創立 30 周年記念演奏会
  1996 ( 8 )    3    荒谷宏退官記念コンサート
  1998 ( 10 )   3    釧路バレエ アカデミー 40 周年記念公演
          8    ズィング アカデミー第 20 木亜定期公演
          9    第 20 回広田曜江門下生発表会
         10    釧路マミー コール 35 周年リサイタル
         10    釧路ピアノ音楽院 35 周年記念演奏会
         11    コール フロイデ結成 20 周年記念演奏会 「 合唱の夕べ 」
         11    第 20 回杉山寿司子ピアノ門下生発表会
         11    第 25 回猪股ピアノ教室発表会
         12    第 20 回進藤信子ピアノ門下生発表会
  1999 ( 11 )   2    釧教大音研部第 31 回定期演奏会
          3    釧路光調会 20 周年記念大会
         11    きよみバレエ研究所 40 周年記念公演
  2000 ( 12 )   7    江南高校吹奏楽部 20 周年演奏会
          8    釧路湖陵高校器楽部第 25 回定期演奏会
          8    北陽高校吹奏楽部第 21 回定期演奏会
          8    釧路北高校吹奏楽部第 13 回定期演奏会
          9    菅野ヴァイオリン教室代 38 回発表会
          9    釧路市民吹奏楽団第 41 回定期演奏会
          9    筝一音会 創立 20 周年記念演奏会
         12    釧教大交響吹奏楽団第 25 会演奏会
  2001 ( 13 )   5    第 42 回三曲協会定期演奏会
          5    駆使と市民吹奏楽団 25 周年記念演奏会
          7    第 30 回合唱祭 ( 合唱連盟 )
          9    ディスクール・シュル ピアノ 30 周年記念演奏会
         11    釧路音楽協会発足 35 周年記念演奏会
         11    釧路地区吹奏楽連盟創立 40 周年記念演奏会
         12    釧路交響楽団第 24 回定期演奏会
         12    釧路吹奏楽団第 33 回定期演奏会
  2002 ( 14 )   2    創価学会釧路吹奏楽団第 10 回定期演奏会
          3    コールカンパニーレ創立 30 周年記念演奏会
          5    第 30 回釧路新人演奏会
          6    釧路消防音楽隊 50 周年記念演奏会 ( 諸事情により七月海産予定の最終演奏会徒なる ) 。
          7    寿芳回創立 45 周年記念公演 「 古典舞踏の会 」

 ひと言で 20 年、 30 年と言うが、これに伴う諸条件を思うと誠に大変なことで改めてそのエネルギーと努力に敬服の念を抱かざるを得ない。表にはないが 86 ( 昭 61 ) 年、釧路男声合唱団が結成され、合唱会の新しい動きとして注目され、男声合唱の魅力に大きな期待が寄せられた。
 現在市内には幾つの合唱団等があるのか正確に把握していないが時には各合唱団の域を超えて、かっての 「 第九 」 のときのように大同団結して毎年または数年に一度大曲に挑むとか、プロの合唱団の招聘または共演を待望する市民も多いのではなかろうか。プロの合唱団による演奏会は数十年間行われていない。

ハ・釧路での地元演奏家・門下生等の発表会の殆どはピアノ・声楽などで、ヴァイオリン部門 ( 弦楽全般も ) は数少ない。その中で

①札木朗里さんの活動がある。医師であった父照一郎さんの次女で 2 才の頃からヴァイオリンを始め、その後ランドルフ・メイコン女子大学音楽部、ネブラスカ州立リンカーン大学音楽部、シンシナティ音楽院等を経てアーチスト・ディプロマ。アメリカ、オーストラリアなどの幾つかのオーケストラで演奏、 79 ( 昭 54 ) 年、釧路新人演奏会に出演し奨励教育長賞、 81 ( 昭 56 ) 年、バッハ 「 無伴奏パルティータ No. 3 」 、フランク 「 ヴァイオリン・ソナタ・イ長調 」 、サンサーンス 「 序奏とロンドとカプリチオーソ 」 で初めてのリサイタル、その後毎年リサイタルやトリオを組んで演奏を続けている。

②菅野絹子さんは松本音楽院才能教育研究会師範科を経て父次男さんのあと菅野ヴァイオリン教室を主宰する。 "父が作ったヴァイオリンの駒につける弱音器は、音色の良さを損なわない優れたものとして千住真理子さんはじめ海外の演奏家からも評価されている" ( 広報くしろ "この人" ) 。約 250 年程前イタリアで制作されたという愛器を手に、愛嬢の志帆さん ( 国立音大器楽科ヴァイオリン専攻科卒 ) と活動を続けている。

③釧路音楽協会発足 35 周年記念演奏会が 01 ( 平 13 ) 年 11 月、多彩なプログラムで行われたが ( 同年 9 月、ディスクールシュル・ピアノ 30 周年記念演奏会で、釧路交響楽団と組んで、進藤信子さんが難曲といわれるシューマンのピアノ協奏曲。作曲者のロマン的詩情を好演した ) 、今度は進藤さんが二人の愛嬢さんとベートーヴェンやメンデルスゾーンを連弾、ヴァイオリンの菅野絹子さんは志帆さんとバッハの 「 二つのヴァイオリンのためのコンチェルト 」 を演奏、どちらも親子という家庭的雰囲気を漂わせながらも一方では子弟という関係の中での演奏でもあった。進藤さんはディスクールシュル ピアノを創立した荒谷宏さんの門下生、荒谷さんは戦後釧路の音楽界の支えとなった瀬戸山雪子さんの門下生であった。菅野さんも札木さんもまだ幼い頃、両親に付き添われて 60 年代当時活動の活発だった釧路労音の辻久子・巖本真理・江藤俊哉のヴァイオリン演奏会に可愛らしい姿をみせていたことなどを思うと、当日の記念演奏会は発足から 35 年とはいうものの、それだけに止まらず、更に 20 数年遡った大きく長い流れの中にあるように思えた。

 一つの活動には目標こそ同じであれ、個々の主張があり紆余曲折もある。川は蛇行し障害にぶつかりながら自ら肥えた土砂を運び水辺を作りそこに美しい花を咲かせる。鳥たちはそこで憩い楽しくさえずるのだ。釧路音楽協会の活動も涸れることなくいつまでも流れていてほしいと思う。

 かっての釧路音楽同好協会は約 10 年、釧路労音は約 15 年の活動で姿をかえたが、音楽協会が 35 年も活動を続けている要因の一つに地元演奏家の育成とその活動の支えを視点において来たことが挙げられると思う。加えて歴代会長さんの尽力もさることながら発足から一貫して事務局長を務めている金谷憙憲さんの抜群の企画運営の手腕と行動力等によるところが大きいのではなかろうか。金谷さんは札幌交響楽団釧路定期演奏会実行委員会の事務局長もつとめ、戦後の音楽同好協会、労音、音文協など釧路の音楽文化向上のための活動に尽くした時間はほぼ人生の 4 分の 3 に近い。仕事がら演奏家などと異なって表面には出てこないが、釧路の音楽活動を語るとき忘れてはならない記録されるべき一人であると思う。


視聴覚ホール・科学館・そして芸術館

①図書館の視聴覚ホール
「 伊福部昭の会 」 ( 会長石丸基司 ) のほかでは教育大学助教授の浅井良之さんによる音と映像による音楽講座 「 歌劇の聴きどころ 」 (イ) モーツアルト (ロ) フィガロの結婚 (ハ) ニーベルングの指輪とラ・ボエーム。音楽わくわくコーナー 「 古楽器による演奏の聴きどころ 」 ( 第 4 回シリーズ ) など、そして今年 ( 平 14 ) から同館所蔵の CD 等の一般貸し出しも始まった。

②科学館ではおよそ 10 年間ほど続いた 「 N 響メンバーによるプラネタリューム・コンサート 」 に続き、最近では高橋義雄、秀一さんら地元演奏家による 「 鼓と笛による能楽コンサート 」 「 声楽とフルートのコンサート 」 「 尺八と琴によるコンサート 」 などが開かれ、

③芸術館では 98 ( 平 10 ) 年の開館記念として前記 「 N 響メンバーによる室内楽 」 、札響団員による 「 音とことばの共演 」 ( ストラビンスキー・兵士の物語など ) 、釧響団員による 「オーボエ・コールアングレー・ピアノによる室内楽 」 などのコンサートが行われるほか、北方音楽展実行委員会による 「 北方の鼓動 」 = 早坂文雄、伊福部昭の世界 = を中央から音楽評論家の片山杜秀さんを招いてのレクチャーコンサートが ( 2 回目は市民文化会館小ホール、満員 ) 行われ、 02 ( 平 14 ) 年、地元の 4 人の作曲家、橋本はるみ、石丸基司、泉史夫、二橋潤一さんら 「 資料 37 - B 」 の作品で 「アール・クシリアン 2002 」 が開かれ釧路での初めてのこの試みに関心を寄せる人もあり盛会だった。

地元の 4 人の作曲家。左から順に、橋本はるみ氏、泉史夫氏、二橋潤一氏、石丸基字司氏 ( 資料 37 - B )

 いずれもこれからの永い活動を願って止まない。
 道立釧路芸術館はもともと市内の美術関係者等の要望があって設立された。アート・ホールは必ずしもコンサート用の施設や条件が揃ったホールではなく、初代の館長さんの荒谷宏さんの気配りも多かったと思われる。その荒谷さん 「 資料 37 - A 」が今年 ( 平 14 ) 年 2 月、病に倒れ多くの人々から惜しまれ亡くなられた。最近、地域の人々の諸活動が活発となり 「 鑑賞から創作へ 」 と公共ホールの利用のあり方が問われはじめている。
 荒谷さんはこうした新しい動きの中で、ピアノ界を含めた釧路の音楽活動全般にわたって永く活躍していただきたい人であった。

釧路市内のホールで演奏する荒谷宏さん ( 資料 37 = A )

  50 ( 昭 25 ) 年頃から始まった戦後釧路の音楽活動の主軸となった人々の時代から観れば、今は師弟関係で 3 ~ 4 代目、家族的に云えば孫の時代に当たる。市民文化会館開館以後は、こうした人が芽生え育ち、今や活動の主軸になりつつある。今回は開館からの 25 年間を概観したに過ぎないが、やはり 25 年は長く、流れの幅も広く、速さを増していることを改めて感じている。
 新しい諸活動の発展・充実・評価については、今少し時間をみることにしよう。

― 以下次号 ―

( 註 )

①釧路音楽協会発足 35 周年記念公演会
 ベートーベン 「 トルコ行進曲 」 他
    ピアノ 進藤智美・華恵・信子
 バッハ 「 二つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 」 ヴァイオリン 菅野志帆・絹子
 アラヴィエフ 「 うぐいす 」 他
    ソプラノ 菊池紅 フルート 鈴木圭子 ピアノ 笠原茂子
 ラフマニノフ 「 二台のピアノのための組曲第一番 OP 5 ( 幻想的絵画より )
    ピアノ 四日友見・里美
 中島靖子 「 笛吹き女 」
    ソプラノ 泉洋子、フルート 浜野久美子 斉藤仁美、 筝 鈴木順子、    十七弦 橋本はるみ、小鼓 高橋義雄
 ドボルザーク  「 スラブ舞曲 OP 17 より 」
    ピアノ 斉藤良子・佐々木尚美
 リャードフ 「 ポーランド民謡の主題による変奏曲 OP 51 」
    ピアノ 高坂朋聖
 ブラームス「 四つの女婿合唱曲OP 17 」
    指揮 子飼久司、合唱 釧路混声合唱団 ( 女声 ) 、ホルン 小沢千尋・奈々 ハープ 坂本絹子

②アール・クシリアン 2002
 橋本はるみ ( 北里綾 ) 作曲
    「 おしゃれな天使たち 」
       筝 木村真や橋本さとい、十七弦 橋本はるみ
    「 玄洪 ( げんこう ) 二面の十七弦筝による 」
       十七弦 橋本みぎわ 平田紀子 )
 石丸基司 作曲 「 大洋のソレア 」 ピアノ 木下太陽
    「 遥かなる印象Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ 」
       ピアノ 松原俊恵
    「 オ-ルルル 」
       ソプラノ 菊池紅、ピアノ 木下太陽
 泉史夫 作曲 「 四人の木管奏者とピアノのための四章 」
    フルート 斉藤ミサ子、オーボエ 諏訪弥貴子 池田盛一、コールアングレー 諏訪信也、 ピアノ 史夫
 二橋潤一 作曲 合唱くみきょく「 海のかたち 」 ( 詩 金沢伊代 )
    合唱 教育大学音楽研究室合唱団、指揮 二橋潤一
 * アール・クシリアンとは 「 芸術 」 と 「 釧路人 」 のフランス語読みを結合させた造語で二橋潤一 ( 道教大釧路校助教授 ) さんの発案で音楽にとどまらず様々な芸術的可能性を追求し発信する仲間としての総称として命名した。 ( 当日プロによる )

③ 「 北方の鼓動 」 は、道内、在釧の優れた演奏家によってともに交流を図り、 埋もれがちな日本人作曲家のサック貧をレクチャー コンサート形式で市民に提供し、北方の大地 「 釧路 」 から広く音楽情報を発信しようと活動を開始。主催する北方音楽展委員会の代表森重雄さんは創生の作曲家早坂文雄の教えを受け作曲の道を志したという。今秋 3 回目を迎える。
Updated 24 August , 2019